いつもの10月。今年はどこに行こうかと読売旅行を訪れる。
「ウルトラ信州2泊3日」という表題に目が行く。
『いったい、何が〈ウルトラ〉なんだろう』と疑念がわく。
20,000円という料金は確かにウルトラで安い。
バス2泊3日で信州というスケジールはこれまでの経験では
超ハードでこれこそがウルトラかもしれない。。

「ああ、信州は一度も行っていないんだ。さださんが住んでいるんだ。
おし、行ってみるか。」
こうして、今回の旅は信州に決まった。


でも、それから一ヶ月、信州のどこに行くのか、
実は全く眼中になかったのだから可笑しい。


地名は目に入っていたのだが殆ど想像のつかなかった世界なので、
予想の立てようもなかったとさびしく言い訳しておこう。


せとうちバスは6時50分に市駅前に滑り込んだ。



  

バスの旅は、途中2時間おきに半ば強制的にトイレタイムをはさみながら、42人のツアー客を信州まで運んだ。バスは、4時35分、最初の観光予定地の小布施「北斎館」に滑り込んだ。p、
瀬戸大橋を瞬時に走り抜け、
山陽道も名神も60数歳の名ガイドさんのパフォーマンスを眺めているうちに過ぎ、
憧れの諏訪湖(写真左下)は雨に煙り、
5時の北斎館閉館前に間に合うべくバスは走った。うむ、ウルトラだああ。


「栗のイガは眼にあたると失明します。木の下から見上げないように。」

これを読んで、初めて信州に来た実感がわいた。

途中のドライブインでブタシャブの豪華なヂナーを頂いて、
バスは一日目の宿舎、北志賀高原スキー場が目の前に広がる
標高1500メートルに位置する「ホテル竜王」に進む。

年季の入ったガイドさんは何度も、
「スキー宿ですからなあんにもありませえん。」を力説している。
そうか、これもウルトラかあと、素直に納得する。
写真を写すのが楽しみになってからの旅は早起きが多くなった。
この日、「朝食前に一時間」と期待して眼を覚ましたら一面に霧が立ち込めていて
写真を写すような陽気じゃないとすぐに分かった。外気は12度と寒暖計が示している。

でも、「幸いに雨は降っていないし。」と防寒の用意をしてゲレンデに出た。
遠くに煙るゲレンデやもうとっくに終わってしまった山野草を恨めしげに写していたら、
突如、数十人の若い男女が霧の中に現れ消えていった。うむ、ミステリーかも。

こんな霧だから写せたと感謝したい白樺の一枚。
雪が降るまで仕事がないロッジの玄関が痛々しいけれど。。




秋映(あきばえ)というりんごが美味しいと誘われるままにひとかじり。

40数人のおっさん・おばさんがドドドってりんご園の入り込んで果物ナイフ片手に
りんごを追いかける様はどこか滑稽で物悲しい、なんて感傷に浸っている余裕なんてない。

旅に出て2日目 もう日常の生活はどこにもない
出会うのはすべて今まで一度も見たことのない初めてのものばかり
心はすでに宙に浮いた状態で どんな言葉もさざなみを起こしたりはしない

これが美味しいと云われれば どれどれと食してみる
あれが奇麗と云われれば 迷わずに眼が行く
心が軽いと 童人のように素直になれる

野尻湖

どんな湖かも知らなかったが、洞爺湖や摩周湖のように
これまでもよく耳にする名前だった。

こじんまりとした規模だが自然が作り出した湖には
おのずとにじみ出す美しさがあるように思う。

眺めの良い喫茶店で350円のコーヒーを飲んで
駆け足でまた、車上の人となった。


野尻湖を出たバスはそのまま山を登り出した。
ガイドは戸隠森林公園に行くと言っている。私には格好のコースだ。
どんなところなんだろう。

戸隠大峯自然休養林

わずかに色づき始めた紅い葉や黄色い葉が歓迎をしてくれた

空気がひんやりと冷たく小川を流れる水が小さな音をたてている

初めて歩く木道は人間にも自然にも優しいのが気に入った




昼飯だあ、いよいよ本場、信州の蕎麦だあ。

ざるにひと口大に程よく盛られた信州の蕎麦は

見た目は、それはそれは旨そうでした。

以下略(苦笑)


食事後、以前は宿屋だったという喫茶店で一服。

広い畳の間に足を伸ばしてバス旅行の疲れも伸ばしました。




楽しみにしていました、この旅行の最大のイベントだと思っていました、善光寺。


でも、期待外れでした。私の日頃の行いが悪いせいでしょう、きっと。
バスから降りると、善光寺専門のガイドさんが、かなり手慣れた様子で私たちをこの三重塔の一室に入れて、
少しこのお寺の由来などを説明したかと思うと、すぐに合格祈願だの交通安全祈願だのと営業を始めました。

あちこちにいる誘導の人や職員の人、言葉はやさしいのですが、感じる気配が高圧的で不快でした。
暗い穴に入るのにバス時間を気にしながら20分もじっと待っているのに、「前につめてください。」なんて、
無意味でお仕着せの言葉をぞんざいに投げつけられました。

あれも修行だったのかなあ。




ホテル白馬ブランシェ

「今日のお宿もスキー宿。なあんにもありましぇん。温泉に行きたい人は別途300円です。」
ガイドさんが
こういうもんだから、私は何にも期待しないで白馬ブラシェに入った。

たそがれ時に滑り込んだバスはそれほど大きくない美しい洋館つくりの前に止まった。
玄関で靴を脱ぎ、数人の従業員の人たちが丁寧に案内してくれる中を部屋まで入った。

確かに、エレベーターはないし部屋の鍵は内側からプチって押す超旧式のやつ。
でも、木の温もりが温かく壁にかかる刺繍や絵画にオーナーのこだわりが感じられる。

食後、フロントで声を掛けたら、オーナーの女将さんが出てこられて30分もお喋りをしてしまった。
お父さんの世代から如何にこのペンションを愛してこられたかを伺って
ますます白馬ブラシェが気に入った。

今度はスキーで伺いたいと約束をした。



数枚写した写真はなぜかどれも手振れを起こして
使い物にならない。
いったい何が起きたのだろう。
これは玄関に入った正面に掛けられていた版画。
出発直前でろくに準備が出来ずに写したのが悔やまれる。
絵のことはトンと分からないが、新しい美しさを感じた。



6:00朝食7:00出発
こんなスケジュールを聞かされても別に驚かない、ウルトラだから当然と覚悟が出来ている。
今日は上高地に行くという。ん、上高地って聞いたことがあるなあってなもんだ。

待てよ、上高地って言えば、さださんがコンサートでよく言っている上高地じゃないのか?
3っ日目のバスに乗ってからこの調子である。

バスガイドが、黒四ダムの話や石原裕次郎が黒部の太陽を撮ろうとした時にハザマの社長が
3500万の全額を出した話などを紹介している。グヘヘ、オレの息子ハザマなんだと思う。

上高地だ。中には乗用車はもちをん観光バスも入れないと聞いてびっくり。
専用のシャトルバスに乗り換えて15分。大正池と呼ばれる辺りで降りる。

「河童橋に12:00ですからねえ」という添乗員の言葉に見送られながら4キロの旅人となる。


大正池
木道 絶景
白樺 穂高
光と影
青空





「白骨の湯が濁らなくなったのは湯道が変わったのです。阿房トンネルが出来たことが原因なんです。」
さださんの絶叫で聞いていた阿房トンネルを通るなんて事前には予想もしていなかった。
片道のバス乗車時間が10時間に及ぶなんてこれもはっきりと認識はしていなかった。

帰って来てからスケジュール表を見たら確かに上高地って、そして10時間って書いてはあった。


バスツアーは、美味しいところのつまみ食いのような独特の面白みがあると思う。
車や列車のような気侭さはないが、決められた時間で美しい風景や美味しい食べ物に出会うのは他にない快感がある。

暖かくなったころ、そして涼しくなった頃にこうしてふらりとバスツアーが続けられたら嬉しい。

2005.10.12