2003.10.4〜5

秋休み

涼しくなって、時間があって、これで旅に出なきゃどうして生きているか分からないじゃないか。
いつもの如く、3日前になって突然に読売旅行のカウンターを訪ねる。
「4日から5日の一泊二日で成立しているツアーはありませんか。」
カウンターの向こうの手馴れたお姉さんが、
「ええとですね、『絶景かな!丹後・夕日ケ浦温泉グルメ三昧まんぷく紀行』っていう企画が、あと4席です。」
・・ん、それにしよう。
こうして、何の脈絡もない旅が決まった。


4日、朝6時50分、松山市駅前出発。
満席の観光バスはショボイおっさんの添乗員の合図で静々と動き出した。
途中、ところどころでトイレ休憩を挟みながら、
瀬戸大橋を越えたところでガイドさんを乗せて、
バスは北を目指す。

申し込み順に座席が決まるので、私の席は最後尾。
狭い、暑い、揺れるの三重苦をものともせず、
けたたましくしゃべるガイドさんの声を子守唄に
うつらうつらとまどろみの時間を楽しむ。


12時10分、播但道を降りたバスは、天橋立に隣接する駐車場に横付け。
私たちはレストランへと誘(いざな)われた。座ると出てくる食事、ビール。これこそ、グルメツアー!!

レストランの一階にあったお土産やさんで買わずにパチリ いよいよ展望台へ、15分も待てないのでリフトで行く
所要時間3分、秋の風が涼しい。モノレールの子供がこっちを見てる、はじゅかし。 髪が紅いって?この際そんな事は何の関係もない股覗きでありんす。「橋立が天に横たわっているそうな。。」
絶景かな、天橋立!
道すがら見つける一寸した鄙びた風景にも心惹かれる。
入ってみたい路地、懐かしい踏み切り、もう色づいている柿、対岸へのモーターボート。
これぞ旅。非日常の時間は心の清涼剤だ。
橋立を向こうからこっちへ歩いた。少々バスの時間を気にしながら50分ほどかけて歩いた。
何の護岸工事もしていない右の岸と左の岸の波の音を聞き、色の違いを見比べ、
数千本もある太く大きな松に見とれ、朽ちかけた老松を哀れみ、若い松に勢いを感じて。
地元の若者のカップルだろうか。あまりに清々しくて爽やかそうに見えたので、無断で一枚失礼した。m(_ _)m

バスは3時に出発と決まっていた。バスツアーの鉄則は時間厳守。
それも、ぎりぎりは危ない。5分前には乗っていたい。
初めて橋立を歩いて、駐車場までの距離も時間も掴めない。
モーターボートのお兄ちゃんが50分あれば十分だよといった言葉を信じて
のんびり歩いていたけれど、時計の針はどんどん進む。
バスにたどり着いたのは53分。
私たちの後に2人を乗せて、何事もなかったように定刻より5分も前に動き出した。


ガイドさんが、和泉式部の娘が詠んだ、かの有名な短歌、
「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」
について解説をしている。興味のある方はこちらへどうぞ。
今度は、浦島太郎の話だ。ようしゃべるなあ。



今日の宿泊は夕日ケ浦温泉「一望館」
実は、1997年に買ったガイドブックには
夕日ケ浦温泉が載っていなかった。
名前から考えて、日本海に面した夕日が綺麗な海岸線の何処かだろう。
そんな想像だけでのこのことやってくるのだから、土台がいい加減なんだ。

ガイドさんの話によると、近年、大阪辺りからのグルメツアーが盛んで、
11月になってカニが解禁になると予約客でごった返すということらしい。
今日(10月7日)、朝日新聞に此処の宣伝が載っていて驚いた。
しおやん、いいとこ見つけたよ♪

小さくて見えにくいけど、
サーファが波に乗っていた。
「寒くないのかなあ。」
子供は元気。
砂浜には素足が似合う
こういう写真が撮りたかったんだ。
でも、おーい溺れるなよ。
この波。日本海だなあ。
松山じゃ台風が来てもこうはならない。
こうして子供の遊ぶ姿を見るのは
今のご時世では奇異な事のように感じる。
男子風呂の入り口で見つけた。
女将さんの心遣いが嬉しい。
一望館を写そうとした訳じゃないんだ。
右上の半月が美しかったんだ。
グルメツアーやぞ。
これは食べ応えがあったよ。
これは朝食。
もう何にもいらんと思いながら
バイキングでこんなに取っちゃった。
一夜干しのカレイが美味かった。
宿に着いてまず一枚。大きな砂浜が印象的だ。
夕日が沈む頃に海岸に出てみた。少し雲が出て夕日を見ることは出来なかった。
私はこのホテルの回し者ではないよ。雲が綺麗だったので絞りを絞って撮ってみた。
海に入るほど気温が高いとは到底思えない。10月の日本海やぞ。
朝、食事の前に海に出て、この等間隔に並ぶ釣り人の群れにびっくりした
写真のことはよく分からないけど、この写真は何故か良いと思う。
今回のベストショット、名付けて「まほろばの宵かな。

、美味い料理と冷えたビール。
これだけあれば何よりも幸せなのに、
今回のグルメツアーの最大の楽しみは
人間ウォッチングであった。

どういう偶然が作用したのか分からないが、
同じバスに乗り合わせた老若男女四十数人は、
誰ひとり名前も顔も知らない。

今回はひとり旅のツワモノはいなかったが、
二人から八人グループまで
夫婦、家族、おばさんの友達グループ。怪しげな二人連れetc
それぞれの様子をそっと垣間見る快感は
しばらく病みつきになりそうだ。



今日はあちこち寄って夜までに松山に帰れば良い。
でも、あちこちとはいうものの、何処に連れて行かれるのか
あんまり良く知らないのだ。(^_^)はは。

ガイドさんが城崎(きのさき)温泉の話をしている。
どうやら城崎というところへ行くらしい。

この赤いかというのがこの時期に水揚げされているらしい。
こりゃ、いかのお化けだよ。
城崎駅のすぐ横に作られた温泉。
足湯が無料との事での体験学習にやって来た。
ツアーで知り合った人たちもこの頃になると
交互にシャッターを押している。
最近のJR駅はどこもつまらない。
間違いなく「しろさき」じゃなくて「きのさき」だった。
外見が素敵だったので入ってみた喫茶店。
古いジャズとブルマンの味が最高に良かった。
観光地に行って飲むコーヒーは一期一会
コーヒーの味が旅の成否を左右する、今回は合格。
なにやら有名な温泉らしいけど、今はパス。 折角ここまで来たんだからと寄った志賀直哉記念館
「城の崎にて」題名くらいは知っていたよ、オレだって。。。 秋の空の方が観光地よりも爽やかだよ。

コーヒーが美味かったから此処は合格
でも、腹はいっぱい、疲れも出てきた。
そろそろ帰りたいよ。
えっ、まだ昼飯もあるし、2箇所も寄るところがあるの?


浜坂というところで無理やり昼を食べた。
一夜干しのカレイを見つけてしっかり買い込んで、
いよいよ最後の観光地、世界最大の但馬大仏を見るとか。

でも、ガイドさんは辛口の批評をしている。
だいたい、奈良の大仏よりでっかくて
金箔の大仏が3つも並んでいるなんて
話を聞いただけで眉唾だよ。
まっ、行ってみるか。

何もない中国山地の山のてっぺんに突如聳える巨大な寺 大阪の多田清さんというお金持ちが二百数十億を出したらしいけど。
ゾーロゾロと歩くツアーの人たち。
一様に「しゃねえなあ、見ておくか。」と背中に書いてある。
うひょ、でかいなあ。でもなあ、全然美しくない。
気品の欠片もない。だんだん鳥肌が立ってきたよ。
中国山地の山の中にこれだけの施設がある。
無駄というか、馬鹿げているというか。
あとは高速に乗って帰るだけ。
添乗員さんお疲れさんでした。

一回くらいは見ておいても良いかと思って覗いてみたけれど、
やはり、見ないほうが良かった。いや、知らない方が良かった。

人間、巨額の富を手中にすると碌な事をしないとは、
いにしえの昔から云われている事だけれど、
こうして目の当たりにすると、怒りより笑えて来る。

こんなお金があるのなら、もっともっと社会に役に立つ使い方があるのじゃないかって、
グルメとビールで崩れかかっている脳味噌で必死に考えていたような気がする。



後記


グルメツアーの企画は男性にも人気で成立し易いと
読売旅行のカウンターで聞いたことがあった。
確かに、今回のツアーは男が多くて心強かった。

行き先なんてどうでも良いようで、
此処も行ってみたいあそこも行ってみたいと思う。

こんな楽しみ方が出来るようになったのも四国三橋が開通したお陰だ。
ホントのところ道路公団サマサマなんだよな、可笑しなもんで。
藤井総裁バンザーイなんて叫んでみるか。。

生活の場を離れることは、
今の自分の置かれている場所を確認する上で
とても重要な意味があると思う。

日常の連続の中に、ふとこうして連続を断ち切ってみると
自分の姿が自分の中に浮かび上がってくるようだ。
ツアーの男たちはみんなそんな顔をしていた。

作成 2003.10.7