2006 8 30 〜 9 3


すっかり定番になってしまった気侭な男の一人旅。

さださんの歌にある大宰府天満宮に行きたくて、
ついでなら、いっそ鹿児島も阿蘇も行っちゃえって、
小さい九州道路地図を眺めてたらその気になっちゃった




由布院

伊方原子力発電所 別府湾 由布院 いよとみ荘

由布院の夜。いっぱい飲んでほろ酔いだったけど、忘れ物をしたようにカメラを持って宿を出た。

直ぐ近くを川が流れ、遠くから踏み切りの音が聞こえる。「ああ、旅に出たんだなあ」と実感した。

山水館の篝火 粋だねえ もう秋桜か
朝風呂 煙る由布岳




宮崎・堀切峠・鵜戸神社

宮崎県 シーガイヤ  そう言えば、バブルの頃、リゾートホテルとして巨大な費用を投じて建設されたと聞いたことがあった。
閑散 燦燦 散散 ハイビスカス?もタクシーの運転手も暇そう
日南海岸 堀切峠 「鬼の洗濯岩」という異名があるらしい

朝 小さい道路地図だけを頼りに、由布院から津久見・佐伯を通って延岡・日向を駆け抜け、

宮崎でもゆっくりする間なんてなく、やっと堀切峠から、ここ道の駅「フェニックス」に着いた。

もう5時を廻っている。都井岬まではあと2時間は掛かりそうだ。無謀な計画だなあ。

だけど、鵜戸神社だけは見たいなあ。駆け抜けるだけでも・・・(実はここで1時間も費やしてしまった)

鵜戸神社 旧参道 かれこれ15分は歩いた やっと入口 安産の神様らしい
左の洞穴に神殿がある 下は断崖絶壁 おいおい本気かよ!
洞窟の中から おいおいコリャなんだ? もしかしてコリャあれか?




都井岬


「8時までには着きたい。」すっかり暗くなって街灯なんて全然ない海岸通りのクネクネ道を、

後から知って背筋が寒くなったけれど、左前のタイヤの調子が悪いと感じながら必死の思いで走った。

突然、「全面通行止」
 

真っ暗な中で、暫くは何が起きたか訳が分からずに、唯、呆然と立ち尽くしていた。(本当にそんなこともあるもんです)

都井岬の宿まであと12キロ。向こうに行きたいけれどどんなことをしても行けない。宿屋の女将は何にも言ってなかったぞ・・・。

やっと宿に電話が通じ、山道の迂回路を違和感のある左前のタイヤを騙し騙し走った。9時半到着。まだ生きていた。

(写真はまだ明るいぞって?。よく気がつきました。これは翌朝、都井岬側から写したものです。)

馬が民家に出ますので・・ 自生しているブーゲンビリア 野生の馬 野生って分かる? 実は瀕死の重傷だったクラウン
ソテツ・ハイビスカスなど熱帯性植物の植物が自生すると聞いてはいたが、こうして目の当たりにすると「持って帰りたい!」と切望した。
お世話になった都井岬「黄金荘」 「黄金荘」から見た志布志湾
朝靄に沈む都井岬灯台 一日の90%は草を食んでいる自由気侭な野生馬




鹿児島

桜島


クラウンがオカシイ。左前がおかしい。

都井岬を出てからも何処かで擦れた音がするしハンドルは時々治まらないないくらいにガタガタガタという。

鹿児島に向かう国道10号線の長い下りを走っている時だった。左側で小さく、カラカラって何かが落ちる音がした、

程なくスピードメーター下に、[ABS]という文字が真っ赤なランプと共に点灯した。

慌てた。道脇に車を止めようとしたが上手くブレーキが効かない。

どうにかこうにか、よろよろとそれでも辛うじてクラウンは止まった。

[ABS]って何だ。何処かで見たことはあるけど分からない。

どうしたらいいんだろう。


ダッシュボードを開けるとトヨタの全国サービス案内が飛び込んで来た。

「鹿児島トヨタ。」よしこれだと電話した。携帯が神様に見えた。

「ABSはブレーキの異常を知らせるセンサーです。近くの国分にNETS TOYOTAがあります。」

電話の向こうは何事もないように冷静だった。

「ベアリングが破損しているようです。ここでは直せません。」

NETS TOYOTAのサービスマンは丁寧に分かり易く今の状態を教えてくれた。


実は、初日。愛媛の三崎峠のカーブで後ろタイヤがスリップしてクラウンが90度以上に横を向き、

その時ちょっとだけガードレールと仲良くして、左前のヘッドライトが損傷していた。

いや、ヘッドライトだけではなくタイヤが円滑に回るためのベアリングにダメージが行っていたらしい。

ここでリタイヤか。

考えた。「それなりにブレーキは効く。鹿児島まで20キロだ。何とか鹿児島まで行けないか。」

鹿児島に出てしまえば、最悪の事態でも方法はありそうに思えた。

結論は出た。走った。

へっぴり腰の初心者マークみたいに額に汗を浮かべながらとろとろと前との間隔を極端に開けて走った。

前輪が途中で外れるかもしれないなんて脅かされていたが、まあそんなこともなくクラウンは鹿児島トヨタに着いた。

「分かりました、やってみましょう。」若いエンジニアがそれでも頼もしそうに答えてくれた。

程なく「ベアリングですね。」と
私にも現物を見せながら、

幾分得意そうに左前のタイヤの付け根の隙間を指して詳細に示した。


夕方までには直ると聞いて安堵した。

ホテルは近かった。歩いて5分。荷物を担いでも負担ではなかった。

ホテルでほっとするとどっと疲れが押し寄せてきた。

「これなら、水俣も阿蘇も大宰府もいける。」疲れた頭のどこかで明日からのスケジュールを反芻していた。

桜島を写しに行く時間だけはあった。


焼酎はオレには合わないって分かっているのに、「ここは鹿児島だあ。」と、美人の誘いの負けて飲み過ぎた。鹿児島の焼酎は旨い。




水俣・阿蘇・太宰府天満宮

水俣病メモリアル

「水俣病」

この事実を知ってから今日まで、一度でいいから歴史上の事実ではなく

人々の真実の言葉を聞きたいと思っていた。

確かにその声は残されていた。

この「水俣病資料館」には、当時の悲惨な苦しみを詳しくつづられた資料が

私にもよく分かるように紹介されていた。


でも、

写真は写さないでください。

この中にある無数の写真は門外秘出だそうな。

何故?


熊本の行政は水俣を忘れて欲しいと思っているのではないだろうか。

水俣の市民は水俣病を忘れたいと思っているのではないだろうか。


患者さんたちは、70歳を越えたそうだ。

県は最近、水俣湾の安全宣言を出したそうだ。

見てはいけないものを見てしまったかもしれない・・・。


大観峰 飛行機を飛ばす人 城山展望所
阿蘇 外輪山 凧を飛ばす子ども
中岳 復活したクラウン
中岳火口 中岳火口周辺
阿蘇草千里
ここが一番高かったんやぞ ウへ、オレの名前がある しゃぶしゃぶ

阿蘇

生まれも育ちも北海道の人間は、

雄大な自然を見るとつい本能的に北海道と比べてしまう。

悪い癖だ。


阿蘇の自然は、あの北海道の自然とは比べられないとぼんやり思った。

質感がまるで違うからだ。

北海道は雄大で、どこまで行ってもまたその先は手のついていない自然が待っている。

人間は、自然の一部として自然のみなさんの邪魔にならないように

参加させてもらって生きているようなところがある。


阿蘇は美しい。

巨大な外輪山を走りながら、

突然に開(ひら)けて来る木の一本もない山々にため息を漏らす。

人間は、この自然に感謝して、この自然を壊さないように

大切に扱っているように感じる。

白い雪が美しいだろうなあと想像するようになったオレは、

そろそろこっちの人間なんだろうなあ。


東風吹か 匂い遺せよ梅の花・・ 心字池かかる 三つの赤い橋は 一つ目が過去で 二つ目が現在 ・・
本殿
あなたがもしも遠くへ行ってしまったら
私も一夜で飛んで行くと云った忘れたのかい飛梅
中国の伝説上の動物 麒麟 そして鷽(ウソ)の鳥

大宰府天満宮

資料館の受付のおばちゃんとお喋りをした。

さださんはすぐ前の広場で2回もコンサ−トしたそうだ。

ここでうたったら気合が入るだろうなあって、その時を想った。

道真公を奉(まつ)っていることは知っていたけど

道真公だけを奉っていることは知ってはいなかった。

さださんはここをたくさんの歌にして発表している。

「飛梅」はその代表だが、売れていない歌にもいいのがある。

道真公の不遇の死は1000年経っても語られる。

道真公が知ったら「笑い飛ばしてくれるだろうか」。


さあ、さださんをうたうか・・





瀬戸内海

帰途

夕日

夕日

夕日



小さなドライブマップひとつで九州を走ると決めた旅は、予想通り無謀な旅だった。

初日の三崎峠で拉(ひしゃ)げた左前のタイヤは、それから『不安』をも友達にさせてくれた。

5日で1400キロを走るのは、いかにオレがクルマ好きでも精神に異常が来る事も分かった。

これで中国も紀伊も、そして九州も走った。

みんな良かった、クルマの旅はよかった。


クラウンは、悪いところはしっかりメンテナンスを施して元気な姿で戻ってきた。

オレの狂い掛けていた神経も日常の木や花や実がぼちぼちと癒してくれている。


あと何度、こうして旅に出られるのだろうか。