今年の大型連休は珍しい旅になった。
東京・上野のマンションに住んでの気侭なチャリンコとハトバス。
右も左も分からない東京で道路地図ひとつでうろうろするとどうなるんだろう。
まあ、田舎では決して見ることの出来ない大都会の真ん中を楽しんだ。



上野駅の正面 上野公園 最後うどん? 西郷どん!
不忍池にて1 上野公園の噴水
不忍池にて2 東京芸大にて
東京大学 安田講堂 隅田川



一日目

午後になって物置からチャリンコを引っ張り出すと、先ずは上野の森へ一直線。
チャリンコだと全体の広さがすぐに掴めて、念願の不忍池もスイスイと走った。
芸大で見かけた白人の娘さんは、それはそれは格好良かった。絵になってた。
安保で有名になった東大の安田講堂も念願の隅田川も初対面。いやあ、どうもどうも。

この界隈で昼間っからビールを飲み出したのが悪かった。
入った中華屋さんが帰国子女二世という私と同世代のおかみさん。
面白いといっちゃ語弊(ごへい)があるけど、そりゃ滅多に聞けない話で、
旧満州の暮らしやら毛沢東教育やらで、こちとらすっかり盛り上がってしまった。

盛り上がったのは良いけれど、しっかり暗くなって外に出た。道路地図を片手に走れども
なかなか上野方面には行けない。錦糸町やら江東区なんて標識が目に入ってくる。
走れば走るだけ上野は離れているようだ。
『あっ』、縁石にタイヤが取られて激しく転んだ。左足からすべり込んだ。ひどく痛い。

この後どうやって帰ったかはよく覚えていないが、上野に着いたのは夜中の1時過ぎ。
そういえば途中の交番で、おまわりに、「もうそろそろ退職も近いんじゃないの、あと何年?」
なんて毒づいていたのだけはよく覚えている。おまわりさん、ごめんよ。



神田 リムショットで 聖橋からの風景
聖橋 湯島聖堂
湯島聖堂 神田明神さん
青いケシ バラの香りの収集
様々な桜草 源氏絵巻



二日目

ギブソンのアコギを世話してもらった神田のリムショットというギター専門店は当初から予定にあった。
でも、これもチャリンコで行ける距離と分かって頑張ってみた。上野が右翼の街宣でうるさいので、
ちょっと反対側の日暮里方面から行ってみようとして大失敗。とんでもない坂道に閉口した。

リムショットで、他では殆ど置いてないという弦をゲットした。ついでに一度弾いてみたいと思っていた
マーチンのアコギを試奏させてもらった。マーチンは暗いとかコモルとか聞いていたけど弾いてみてびっくり、
よく鳴るしクリーアーな音でワタシ好み。「うーん、楽器は値段で決まる。」としっかり納得した。因みにそいつは55万。

さださんのうたに「檸檬」といううたがある。湯島聖堂の白い階段や聖橋から食べ掛けの檸檬を放ったりする。
一度ゆっくりと現場に身を置いてみたいとかねてから楽しみにしていた。暑い日の午後だった。
もう流れていないのじゃないかと思わせる澱んだ川と入り組んだ線路は「快速電車の赤い色」を想像させた。
静まり返った湯島聖堂は本当に此処だけ時間が止まっているのじゃないかと思わせ、さださんの世界を探った。

チャリンコでアキバを走ってアメ横なんて通って上野に戻った。時間があるので国立科学博物館の『花』展に寄った。
青いケシを見てもバラの香りの収集法を見ても何故か伝わるものがなかった。植物は自然にあるものが美しいと思う。



ハトバス 一日昼食付いて7900円なり
 ひとつ目 サツキ・ツツジ
植物園 フジとカキツバタ
靖国通りかな? 東京はどこもこんなもんだ。
ふたつ目 上野 伊豆栄で昼食 ビールが旨い 上野の東照宮 勉強してから来るんだった・・
ボタン ぼたん
ぼたん 牡丹
ぼたん ボタン
東照宮 みっつ目 浅草
みなさん 集合は二天門前ですよ うわあ、今日は何のお祭り?
人 ひと ヒト



三日目

かねて予約していた都内観光・ハトバスに乗った。東京駅丸の内南口には同様の目的で多くの観光客がいた。
この日、この一隅から出た観光バスは300台とか。10分おきに20台以上のバスが出て行く様は例えようもなく騒然としていた。
9時30分、44人を乗せた「江戸東京花紀行」はガイドさんの「出発します。」のひと声で静かに動き出した。
読売旅行のケタタマしいバス旅行しか知らない身には、こういうバス観光もあるのかと新鮮な感動を感じていた。

まずは後楽園・小石川の植物園。60分の時間をもらって入園する。周囲の東京ドームや高いビルに見下ろされて、
「ああ、東京では自然というのは訪問して入れてもらう物なんだ。」と理解した。遠くに子どもの叫び声が聞こえる。
園内はよく整備されていてフジやカキツバタが見頃だったが、管理された自然は息苦しくて、植物の悲鳴が聞こえて来そうだった。

ふたつ目の上野はもうすっかり身内の気分。でも東照宮もボタン苑もこの日のために見ないでおいた。
それが失敗だった。「15分で見ろとは無茶だ。東照宮には左甚五郎の何かもあるんだぞ。」
色とりどりの牡丹は、迫力満点だ。長く人間に飼われた動物たちの様に媚びた美しさをまき散らしていた。
東照宮は時間がなかった。甚五郎には会えなかった。それでも戻ったらドベで、周囲の白い目が気になった。

みっつ目 浅草。バスは少し離れた路地に止まった。ひと気はない。二天門から浅草寺に歩いたら突然のヒトひと。
一体、何処からこれだけの人が湧いて来るのだろうと思わせる人の波。老いも若いもなく人があふれて来る。
「日本語が少ない。」東京に出てからずっとその事が気に掛かっていた。電車で突然聞こえる外国語にはびびる。
この浅草でも、彼方此方で分からない言葉が飛び交っている。知事に石原慎太郎が勝つ理由が分かる気がした。



息子の住む街




後期

女房が、連休はずっと東京で仕事をしなくてはならずオレをひとり田舎に残しておくのは不安だったのだろう。
いつもとは違って妙に優しく、飛行機のチケットからチャリンコの手配まで終止抜かりなく準備していた。
ひとつも予定を作らずに東京に行ってどんなことになるのか、それなりに興味もあって何の準備もしなかった。

東京で遊ぶのは大変だ。これが率直な感想だろうか。

見たいもの聞きたいものはたくさんある。刺激が多いと思ってた。確かにそうだ。
でも、どんな刺激にも出掛けて行って出会うまでにたくさんの時間と労力とお金がいる。
チャリンコのおかげで距離感が少し理解出来たけど、広さもよく分かった様に思う。

自然が訪問して行って触れるものという感覚は私にはあまりに辛い。
人に飼われた花たちの窮屈な息遣いを見て、植物にもこんな暮らし方があるのかと驚いた。
昼間でも照明が必要な完全オートロックのマンション暮らしは5日居ただけで息が詰まった。